お知らせ

立ち直る力

2024.03.27



子どもたち(丁度2、3歳ごろの発達段階)は、見立てる力を発達させていくことで、現実を理解していく力を学んでいきます。双眼鏡一つあれば一気にボルテージが上がり、仮想の世界から現実をのぞき込み、楽しさの中に没頭し欲求を満たそうと努力します。人形あそびやままごと遊びなども同じです。大人の言うことも、子どもたちなりの独特な理解の道筋で正解を導き出そうとしています。物への見方、使い方は大人よりも独特で、視野の広い見方で発想しているように感じます。固定観念で同じ窓枠から観ようとする大人とは、きっと思考回路が異なっているのだと思います。これも幼いからこその発達過程に含まれている謎深き道筋です。しかし子どもたちは、幼くても決して現実と見立て遊びをごちゃまぜにしているわけではなく、区別していることが現代の発達心理学者や哲学者によって明らかにされています。

そして今日の室内遊びへの取り組みを見ても、観察力や気づきの力、巧みな身体使いをしていることが良く分かります。これはひとえに毎日の外遊びの効果だと自負しています。園庭は起伏に富み、新たな発見や不思議に富み、毎日の気候状況による変化は、子どもたちの心と身体を実に感度の良い、粘り強い思考と身体使いに導きます。これが子どもたちに培ってあげたい「かしこい指先と体つくり」、「自発性に富み意欲的で強い心つくり」です。
3歳までのこうした土台の育成は、必ずや3,4,5歳の成長に良き影響を及ぼしまうす。特に「何かにつまずいたとき」、「仲間との関係がうまくいかないとき」、「失敗のとき」に効力を発揮するはずです。人間は「立ち直る力(レジリエンス)」を身につけることが大事です。失敗を恐れず前向きに生きる力を身につけるために、今後、自然や人から多くの試練を与えられることでしょう。大人よりも長く生きなければならないことを考えると、ひとり立ちのために手順を踏むことが必要です。そしてその力は決して大人からの教授による「知識」や「技術」の修練で得られるものではないのです。仲間の中、自然の中でもみくちゃになりながら得られる力なのです。

もうすぐ2歳児クラスの子どもたちは、この保育園から旅立っていきます。どの子がどこまで自己を伸ばせているかは数値化できるものではありません。また比較する必要もないのです。唯一のひとり一人がこの保育園で過ごした時間が、次の幼児教育機関、いえいえ小学校になった時花開くこともあるのです。残念ながら4月からは、私たちが毎日子どもたちと伴走はできませんが、子どもたちが最も信頼するご家族様の元、自分自身の可能性の花を開くときが必ずやってきます。その時にそばにいてあげられるのは家族しかいません。

カテゴリ:発達

発達と安全の境目

2024.03.17

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おはようございます。
保育現場では怪我による潜在危険の察知(怪我の予測への構え)が非常に大切です。道具を使う場合の子どもの経験、知識、心身の発達段階を日頃から頭に入れておくと、「Aさんは大丈夫、Bさんの場合はもしかすると危険な転び方をするかもしれない」、と個々の特徴に沿った安全確保を行えます。一斉に禁止することは簡単です。しかし安易な「挑戦への制止」は避けなければなりません。すべての安全基準を一律に個々に当てはめることは、「何に対しても否定」に繋がり、各々の伸びようとする力、頑張ろうとする意欲をくじくことになります。

園庭はどの発達段階の子どもが過ごしても、極力大きなケガに繋がらないように環境整備しています。しかし道具や玩具、特に子どもたちが「面白そうだ」と感じるもの(縄跳びヒモ、押し車、大きなボール)をどのように扱っているかには目を離さず、ケースによって判断しなければならないと思います。だから大勢を観ていくには、それなりの保育士の人数と発達への眼差、注意力が必要になってくるのです。

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先日のケースです。2歳児さんが押し車で築山の頂上から、勢いよく滑り降りてきた様子を視て、1歳児さんが真似しようとしました。私は「おそらく車の前底の部分が引っかかり、前方へダイブするように身体ごと突っ込むだろう」と予測しました。案の定その通りの状況になった時、その子を抱きとめ、顔、身体の強打を防ぎました。このようなことは当然起こり得ます。「やってみたい」といった欲求はできるだけ叶えてあげたいのですが、それなりの備えと、不測の事態に備えた支援者の位置は、用意しておかなければなりません。一度この経験を経れば、子どもたちは自分自身で注意するようになります。足を使ってスピードコントロールする、滑り降りるコース、高さを選ぶ、誰もが怖い、痛い思いはしたくはありません。様々な方法を体験できる機会を提供することで、危険を避ける力を育てる、これこそ大切な子どもに培いたい発達と能力なのです。

カテゴリ:発達

0歳児クラスの発達に必要な環境

2024.03.17



「子どもたちは玩具、自然に数多く触れる機会があってこそ、自らの力を身につけていくことが可能となる」は、何度もお話しています。今日もそんな様子が随所で見受けられます。何事も最初は「まね」からが始まりです。「まね は まねぶ まなぶ」と古い言葉が変化したと言われています。子どもは良くも悪くも自分より年長者のやること言うことを真似することで成長していきます。「親の背中を見て育つ」、「言うことよりもやることを観てまねる」これは科学的にも、ひよこが卵から孵った時目の前に存在する対象についていくという本能からも良く分かります。自らが生存していくための最善の方法が、この「愛着行動」なのです。

子どもの愛着行動は最も影響が大きいのは母親(養育者)と言われています。養育者を第一の安心基地とし、第二第三の安心(父、祖父母、保育士、なかま)の順に、心が安定できる関係性が広がっていきます。それが「まねる」を生み出しています。何でもやってみる好奇心は、最初は対象への直接的興味というよりは、安心できる人が行っている遊び、使っている玩具だからまねて使ってみる、といった行動だと考えます。

いずれにせよ「まねられる対象」として、子どもたちの見本となれることが、子どもを家族ばかりではなく社会で育てていくことに繋がることだと思います。成人後はそのような他者、子どもたちへの責任も負い、人間社会を継続していかなければなりませんね。

カテゴリ:発達

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